クラウドアプリケーション開発基盤と「管理されたEUD」の可能性 ー kintone雑感
先日、サイボウズ社から発表されたkintoneのベータデモを拝見してきました。これがわたしの予想以上に(失礼)素晴らしく、そこからSharePointも含めたユーザ企業の「情報基盤」がこれからどういう方向に変遷し得るのか四方山考えさせられました。雑感レベルですが簡単にまとめてみたいと思います。
古きよき「未来」を感じさせるkintone
kintone(きんとーん)については、以下の記事・サイトが参考になります。。
・手軽で安い「ファストシステム」目指す、サイボウズがPaaSに参入
・サイボウズのクラウド「Kintone」は、アプリストア+ノンプログラミング開発か?
・kintone公式
※余談ですが、公式のデモ動画がかなり良くできていて、サイボウズ社の力の入れ具合を感じます。ネーミングセンスが相変わらずなのが安心のサイボウズです(笑)
kintone位置づけは、salesforce.comをより簡易に、日本人ライクに、安価に、をコンセプトとしたクラウドアプリケーション基盤(兼ビルダ)になります。
私自身が実際に動いているkintoneものを見た印象としては「ノーツ」でした。ノーツといっても、ドミノよりむしろR4.x時代のC/Sに近いかもしれません。基本仕様はカード型データベースで、まずフォームを定義してそこに部品(フィールド)を配置し、GUIで各種設定パラメータを設定。最後はビューを定義して完成。元R4.6ユーザはとしてはものすごい既視感がありました(良い意味で)。
これは、考えてみれば凄いことです。5年前はブラウザでここまで「グリグリ」とGUIベースの開発を行うことは不可能でした。技術の進歩を実感させられます。
もちろん、最新基盤としての機能強化もなされています。旧C/Sノーツの最大の弱点とも言えた「串刺し検索ができない」問題は解決済み。カード型データベースが苦手とする「フォーム内複数レコードの集計」も、別に集計レポートを提供するなどの対策がとられるようです。更に既存の社内システムと連携させることも可能(もちろん制約はあります)
まだ本稼働前ということで「感触」に過ぎませんが、かつてノーツで実現し、しかしノーツの様々な制約や管理面の問題で断念したEUD(エンドユーザによる開発)にもう一度、より洗練された形でトライできるかもしれない。そんな明るい未来像?を感じました。
SharePointとkintone
先に結論から書いてしまうと、SharePointとkintoneは、とても有益な相互補完関係になり得るではないか、と期待しています。
SharePointはグループウェアであると同時にアプリケーション基盤でもある訳ですが、「グループウェアとしてのSharePoint(標準)」はかなりシンプルで、あまり機能面で充実しているとは言えません。特殊な業務フローの実装は不得手です。
一方、アプリケーション基盤としてのSharePointは、コーディングを伴う「開発」が前提です。そのため大規模な、或いはコアな業務であればSharePointで開発するメリットは大きいのですが、逆に特定部門でしか利用しないような「ミニ業務アプリ」はこのアプローチが取りにくい。
つまり、「標準機能」と「中大規模開発」のあいだに、SharePointでは充足し難い「空白」があるのです。これをkintoneで補完できるのではないか、と期待しています。「必要なぶんだけ購入」といクラウドのメリットも活かせるでしょう。もちろん、SharePointと二重投資になりますので、kintoneのライセンス価格設定次第ではあるのですが。
管理されたEnd-user development
これは私自身の話でもあるのですが、ノーツでEUDを進めた結果、最初はよかったものの、次第にデータベースが乱立し環境がカオス化してしまった、というお話をしばしば聴きます。そのせいかはどうかは分かりませんが、最近は「EUD」という言葉そのものをあまり聞きません。
しかし、ここは強調しておきたいのですが、「EUD」というコンセプト本来の価値は全く色褪せていません。下り坂な経済状況もあり「現場がほんとうに必要とする道具としてのミニマムシステム」の必要性はむしろ増していると思います。
その一方で、ビジネス環境の変遷はますます加速する傾向にあり、コスト面でもビジネススピード面でも(つきつめると両者はイコールなのですが)、すべてをシステム部門が統括するモデルの限界が見えはじめてはいないでしょうか。むしろ今こそ「EUD」なのかもしれません。
もちろん、かつての失敗を繰り返す必要はありません。環境が「カオス化」しないためには、エンドユーザに自由を与えつつも、要所要所をシステム部門が抑える「適切に管理されたEUD」を実現する必要があります。そのためには、運用設計の工夫はもちろんですが、基盤側にも、必要に応じて利用できる機能を制約するなどの「運用管理系」機能が求められるでしょう。kintonはぜひこうした機能を充実させてほしいところです。
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