書評 ひと目でわかる SharePoint Server 2013 サイトカスタマイズ&開発編
SharePoint 2013 関連書籍の二冊目が上梓されましたので、簡単な書評(感想)を。「ひと目でわかる SharePoint Server 2013」に続き、本書のテーマは「サイトカスタマイズと開発」です。ユーザーの現場キーマン向けと、開発初心者(?)向けの大きく二つの内容が収録されており、率直に言って「非常にオススメ」です。
本書は「サイトカスタマイズ&開発編」と題されいるように、大きく「サイトカスタマイズ」と「開発」の二つの内容で前後にわかれています。
前者は、エンドユーザーの中でもより SharePoint を使いこなそう、という、いわゆる「パワーユーザー」向けです。設定ベースに加え、CSS や Javascript を利用した、表示形式のカスタマイズについて、基礎から細かなテクニックまで詳しく解説されています。実際に試すことができる CSS や Javascript のサンプルが多いのもありがたいところ。また、XSLT によるリストビューカスタマイズや、デザインテンプレートのカスタマイズによる大きな外観変更など、かなり「開発」スレスレの領域についても説明されています。
更に、SharePoint Designer を利用した「ワークフロー」についても、詳細な解説があります。SharePoint 2013 では旧来の「 SharePoint 2010 形式のワークフロー」とは別に、新しい「SharePoint 2013 形式」を利用することができるのですが、しかし、2013 形式は必ずしも 2010 形式の上位互換ではないため、なかなか理解が難しいところです。本書では両方について、違いと使い分けも含めて実例ベースで詳しく紹介されています。こうのワークフローついてきちんと整理された情報、という意味では、本書は日本語ではほぼ唯一だと思います。
一方、本書の後半は「開発」がテーマです。これは完全に Visual Studio 等を利用したコーディング(ノンコーディングの場合もありますが)を前提としており、その点で「玄人」向けなのですが、本書はあくまで「開発入門」という位置づけになっています。
SharePoint における「開発」行為の基本フレームワークの紹介から、開発環境をどのように準備するか、そして SharePoint 開発には必須となる「SharePont オブジェクトモデル」の解説まで。このあたりの体系的な整理は、これから開発を始めようという方にとっては正に「これだ!」という内容だと思います。逆に既に開発経験のある方には「自分のときにこれがあればなぁ」と思われるかもしれません。
また、開発実例も豊富に掲載されています。「Webパーツを開発してフィーチャー化」「カスタムのタイマージョブ」「リボンにカスタムアクション」など、いずれもエンドユーザーから要望の多い実践的なチョイスです。このあたり長年 SharePoint ユーザー/開発者教育に携わられてきた著者のノウハウが発揮されています。
加えて、SharePoint 2013(Office 365)から新たに加わった「SharePoint (用)アプリ」開発についてもまとまった記述があります。SharePoint アプリは、クラウドのアプリストアからユーザー自身が個別機能を購入できる仕組みですが、オンプレミス環境の SharePoint でも「自社用」のカタログを作成し、利用することができます。アプリケーション機能の新しい提供形態として、開発者だけでなく利用者側からも期待度は高いのですが…しかし、まだ新しい仕組みであり、整理された情報が少ないのが悩ましいところでした。その点で、本書は非常に貴重な資料だと言えます。
以上、簡単に内容をかいつまんでみましたが、如何でしょうか。本書は「SharePoint パワーユーザー」「SharePoint 開発の初心者」いずれ層にもお勧めできますので、ぜひご一読を!ただ、前後半でかなり両極端な内容になっているため、特に一般 SharePoint ユーザーの方は「折角購入したのに半分しか理解できない…」という不満はありえるかもしれません(笑)とはいえ、その半分でも十二分にお値段以上の価値があると思いますよ。