書評「徹底比較 Google Apps&Office 365」

名前の通り、Google と Microsoft の企業向けクラウドサービス「Google Apps」と「Office 365」を比較解説した書籍。個別の解説はあちこちにありますが、このような対比情報はなかなか得られません。72頁のムック本で、ボリューム的にあっさり気味であるものの、情報価値は高いですね。

この種のテーマは、競合関係にある製品(サービス)を扱うだけに、如何にどちらか一方に偏らずバランス良く書けるか、という点がポイントになる訳ですが…あくまで私個人の印象であることを強調した上で、正直に書くと、そこに少々難を感じました。

内容に嘘はないですし、扱いは基本的には公平です。ただし、読者の Office 365 に対する印象が Google Apps より「少しだけ」良くなるような構成テクニックが、随所で見受けられます。

1.Google Appsについて解説。
2.Office 365について解説。
3.「ただし GoogleApps はここが駄目」または「Office 365だとこんなメリットもある」と片方だけ付記。

というスタイルですね。
当然、読者には最後の部分が印象に残ります。

例えば、サポートとドキュメントに関するページはこんな感じ。

これは全て「事実」かもしれませんが「実情」ではない気がします(あくまで私個人の認識ですよ)。英語情報が中心で、ドキュメントの新旧が判りにくく、サービス更新が頻繁なため最新情報が把握しづらい、という弱点は Office 365 でもあまり変わりません。まあ、確かに最近のMicrosoftさんはドキュメンテーションを頑張られているので「一歩リード」はしているかと思いますが、ユーザ視点だと、優劣というよりも、まだどちらも「劣」で、あとは程度の差に過ぎない気がします。

こんな感じで、全般的にステルス・マーケティング的に Office 365 寄り(あくまで私個人の印象)です。むしろ上手くまとめるものだ、と感心してしまいました(苦笑)

その為、本書は「Office 365 の利点」という点については、やや怪しいです。しかし、だからこそ逆に「Google Appsの難点」については、かなり的確な指摘がなされています。その意味で、やはり情報としての価値は高い、と言えそうです。

なお、巻末に付録として、Google Apps と Office 365 のシステム要件と個別機能が、契約プラン毎の差も含めて一覧表になっているですが、これが文句なしに素晴らしい。特に SharePoint Online が良くまとめられていています。5頁程度ですので、スキャンして全部ここに引用してしまいた位ですが…もちろん、そんなことはしません。ぜひ買ってお読みください(笑)


Author

中村 和彦(シンプレッソ・コンサルティング株式会社 代表)が「ユーザ視点の SharePoint 情報」を発信します。元大手製造業 SharePoint 運用担当。現SharePoint コンサルタント。お仕事のお問い合わせはこちらまでお願いします。当ブログにおける発信内容は個人に帰属し所属組織の公式発信/見解ではありません。
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