SharePoint 2013 のソーシャル機能は使えるのか?個人的なあれこれ(雑文)

どうも、maniacs の中村です。今回は雑文です。週末の Japan SharePoint Group にむけて、SharePoint 2013 のソーシャル機能を検証してまして、それに関連していろいろと思うところ、備忘録をかねてつらつらと。まあ、技術的にディープな部分ではなく、このソーシャルぽい機能は実用に足るのか?という観点から触り倒しているだけなので「検証」といえるのか判りませんが。

SharePoint 2013 のソーシャル機能は、やはり注目されています。Microsoftさんはそれを新バージョンの一押し機能としてアピールしていますし、構築系の方から聞いた話では、新規の SharePoint 2013 案件はほぼ確実に「ソーシャル」機能がメインになっているそうです。

ただ、この「ソーシャル」は曲者で…これをきちんと語ろうとすると、どうしても「そもそもソーシャル機能ってなにを指すの?」という問いから逃げられません。なにしろ曖昧ですから。が、このエントリはその辺りがテーマではないので割愛(この手の小難しい話は私の個人ブログでやってます)。

ここでは、Facebook や Twitter 的な、いいね、フォロー、タイムラインなどの、いかにもな機能を「ソーシャル」としておきます。

さて。SharePoint の新機能、と言われると、実は印象があまり宜しくありません(苦笑)過去に前科アリ、といいますか… ShraePoint 2007 の「ブログ」「Wiki」とか、SharePoint 2010 の「マイクロブロギング(メモ掲示板)」や「タグ」など、どう贔屓目にみても素晴らしいものとは言えませんでした。とりあえずブームだし実装してみました、的な(ああ言っちゃった)。

しかし、SharePoint 2013 の「ソーシャル」は、これらに比べるとかなりきちんと考えられ、作り込まれている印象です。その意味で「二度あることは三度」ではなく「三度目の正直」とプラス評価できそうですね。

ポイントは【サイトのフォロー】を中心にすべてを組み立てている点。サイトをフォロー、というのは Facebook にも Twitter にもない、SharePoint 独自の概念なので、実際に触ってみて頂かないことにはなかなか理解し辛いのですが…。

SharePoint 2013 では、つぶやきのアクセス権(表示範囲)として選択できるのは「自分がフォローしたサイト」になります。その呟きには、サイトのアクセス権が適用されます。更に、その呟きはサイトに紐づけられ、「サイトフィード」としてサイト上に表示される他、自分をフォローしていなくても、そのサイトをフォローしているユーザーのニュースフィード(タイムライン)に表示されます。

従来、SharePoint は エンタプライズポータル(トップ)→サイトコレクション(ルート)→サブサイト→サブサイト→リスト/ライブラリ→フォルダ と、情報を構造化/体系化することが重視されてきました。私自身も、それが SharePoint を使いこなすコツとして、お客さんに薦めてきました。

しかし、SharePoint 2013 からは、あくまで個人的な見解ですが、この方向性が大きく変わった(もしくは変えようとしている)ように思えます。組織でなく個人を中心に据え、情報ストアそのものは細かなチーム単位のサイトに細分化。その間を、ソーシャル機能と、拡張された検索機能で繋ぐ。例えるなら、各部署、チーム毎にフロア割りや机割りがきちんと決められている状態から、フロア丸ごとフリーデスクにしちゃった感じです。

現実の(事務所の)フリーデスクがそうであるように、この設計は、明らかに案件単位、プロジェクト単位でチームを組み、業務を進めるようなやり方に向いています。欧米スタイル、ということなのでしょうか?

逆に言えば、これまでサイトコレクション/サイト割りふりをきっちり計画し、ガバナンスを効かせてきた日本企業(大半がそうだと思うのですが)は、このあたらしい SharePoint の思想に馴染まず、苦しむかもしれません。

また、ソーシャル機能に話を戻すと、データーの持ち方に不安が残ります。

SharePoint 2013 のソーシャル、具体的には「自分のマイクロブロギング(呟き)」と「ニュースフイード(タイムライン)」は、データを分散保持する仕組みです。ざっと見たところ、自分の呟きは個人用サイト内の隠しリストに、サイトフィード(特定のサイトに紐づけてそのサイトのアクセス権で公開範囲を絞った呟き)は、そのサイトの隠しリストに保存されます。また、フォローや「いいね」投稿の情報は、自分のユーザープロファイル内に保持されます。

これらを、SharePoint が繋ぎ合わせて、個人毎の「ニュースフィード(タイムライン)」を構築している訳ですが。個人用サイトやチームサイトの隠しリストを見てみると、データをかなり特殊な形で保持しており、相互の関連性は GUID などをキーにして担保しているようです。

ということは…これ、データの保守性はどうなんでしょう?例えば、ユーザーが退職してプロファイルや個人用サイトが削除されたら?ソーシャル的な会話をきちんと維持するには、個人用サイトは削除すべきではない、ということになるのかもしれません。

サイトをエクスポート・インポートで移動したらどうなるでしょうか?別環境(別Webアプリケーション、別ファーム)にサイトフイードを含めてきちんとマイグレートできるのか?次のバージョンアップの際にフィードもまるっと維持できる?さらには、オンプレミスから Office 365 に移行したい場合(最近増えています)、あるいはその逆のケースで、フィードをきちんと持っていけるでしょうか?など。

また、そもそもですが、データストアが「リスト」ということで。数年も運用すると人によりアイテムが膨大な数になることがありそうです。パフォーマンス的に大丈夫なのか、その点もちょっと不安ですね。

その辺りのリスクを考えあわせと、SharePoint のソーシャルはあえて利用せず、例えば Yammer や YouRoom のような、独立した外部サービスを採用する、という選択肢もありえるのかもしれません。

SharePoint の機能があるのだから二重投資だろう…と指摘されそうですが、その通りです(苦笑)しかし、実用面を考えると、極端にフロー度が高い(にも関わらず一定の蓄積も求められる)「ソーシャル」機能と、組織レベルの発信や情報の蓄積(ストック)が基本のグループウェアとは、期待されるサービスレベルはかなり違いそうなんですよね。

だから、いっそ基盤ごとわけてしまい、GUI上で統一した方があながち合理的、と言えなくもないと思います。まあ、業務の「ソーシャル」機能に対する依存度次第でしょうか。

ちなみに、誤解されている方も多いかと思いますが、Microsoft が買収した Web の SNS「Yammer」は、現時点では SharePoint とはほとんど関係がありません。まだ統合されていないんですね。今年から、Office 365 を契約しているユーザーは Yammer も使えるようになる、という情報はあるのですが、具体的な話は未だ全くです。おそらくライセンスが提供されて、Microsoft ID を Yammer のアカウントとして利用できるようになる、という程度かと思います。

また SharePoint 2013 のソーシャル機能の話に戻りますが、初期状態では、個人のニュースフィード(タイムライン)は7日で消滅します。データが消えるのではなく、タイムラインとして表示されなくなるだけです。しかし、標準の GUI からでは、これを遡る方法はありません。

SharePoint 2013 は「分散キャッシュ」という新しい仕組みでニュースフィードのパフォーマンスを担保しているのですが、このフラッシュが既定で7日間なんですね(この辺とかこの辺を参照) 。

まあ、確かに Facebook を利用していても、7日前の投稿なんてほとんど見ないのですが…しかし、業務で使うとなると、どうでしょう?個人的な感覚としては、週に一回くらい「先月に誰かが言っていたアレ」という感じで遡及したい状況があるような気がします。

もちろん、オンプレミスの SharePoint はこうした要求に対応する為に、分散キャシュを専用サーバー化して(この辺参照 )増やすことで、パフォーマンスを担保することができるようになっています。この辺りも見込みというか、構築時にあたり設計の前提に落とし込んでおくこも、SharePoint 2013 の重要ポイントになりそう。なにしろ新しい機能ですから、忘れてしまったりすると…後から残念な事になりそうです。

それでは、この辺で。なお、弊社では社内ソーシャルのお仕事募集してます!個人的な研究領域でもありますので、「ブログで見た」と言って頂ければ特別割引またはキャッシュバックつけますよ(笑)図書券と Amazon ギフトカードだとどっちがいいですかね?(笑)


Author

中村 和彦(シンプレッソ・コンサルティング株式会社 代表)が「ユーザ視点の SharePoint 情報」を発信します。元大手製造業 SharePoint 運用担当。現SharePoint コンサルタント。お仕事のお問い合わせはこちらまでお願いします。当ブログにおける発信内容は個人に帰属し所属組織の公式発信/見解ではありません。
FB : 中村 和彦
blog: Be・Better!
MS MVP SharePoint 2009/10-2011/9
MS MVP Office 365 2012/10-2014/9